第一回目のお話はこちら からどうぞ!
<天下一準決勝>
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【あらすじ】
29歳の主婦『京子』は、
年上の夫(たかし・36歳)と一人息子(たけし・10歳)とともに平凡ながら幸せな毎日を送っていた。
いや、送っていると思っていた。
広すぎる家を毎日掃除し、夫と子供のために食事を作って待つ……
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日……
自分を「幸せだ」と思ってはいたが、あまりにも単調すぎる日々の繰り返しに、いつしか京子は、
身を焦がす様な刺激を欲する様になっていた。
そんな時に出会った『パチンコ』。
そしてパチンコを教えてくれた……
歳の離れた男………ひとし(52歳)
ひとしは京子に『オスイチ』『やめちゃったふり作戦』などを教え
そして…
刺激を与えた。
台パンを、
そして素人○貞だったひとしを引っ叩く喜びを教えてくれた。
思い立ってGO TO キャンペーンで旅打ちに出かけた京子とひとし。
刺激を求めるあまり家の預金300万円をつかい込んだ京子。
………もう、止まらない。
止められない。
京子の刺激への欲望は、走り出した。
しかし、その矢先、
ひとしとの滞在先のホテルに
夫のたかしが息子のたけしを連れて乗り込んできたのだった。
…
…
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(時は少し戻る。)
僕の名前はたけし。10歳。
パパの名前は、たかし。
ママの名前は、京子です。
今朝起きたら、
ママがどこにもいませんでした。
今日は日曜日だし、いつもならママは台所で朝ごはんを作ってくれるはずなのに…。
どうしたんだろう。
どこかにお出かけでもしているのかな?と思って、僕は1人で遊んでいました。
でも、お昼を過ぎても、15時を過ぎても、ママは帰ってきません。
パパに一度『ママを探しに行こうよ!!』と、言ったのですが
パソコンに夢中で僕の話を聞いてくれません。
『よし』
とか
『こい』
とか
『あがれ』
みたいな事を言っています。
一人でぶつぶつ言っています。
あーあー。
朝も昼も食パンで飽きちゃったなあ…。
ママ、どこいっちゃったのかなあ。
…
…
…
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(たかしが乗り込んできたホテルを出た後、京子とひとしは…)
ひとし
『上手くいきましたね。』
京子
『そうですね。
…でも、ひとしさん…あんな大金本当に…』
ひとし
『大丈夫ですよ!!
僕のパチンコの生涯収支は8000万円です!
それにさっき電話でホテルのチェックアウトも済ませましたし、レンタカーも手配しておきましたから!!』
ありがとうございます……
そうひとしに告げて、私は車に乗り込んだ。
さっきのホテルでの修羅場は、かなり刺激的だった。
■預金通帳の300万を使い込んだこと
■パチンコ屋で知り合った男とホテルにいること
■家族を捨てようとしたこと
そのすべてが夫にバレたのだ。
刺激が大きすぎて、頭がどうにかなりそうだった。
…ただ、この先の不安とか夫への恐怖とか
そんな事ではなくて
私の中にあったのは……
『快感』だった。
こんな修羅場な状況なのに、大きすぎる刺激に対して
私は…
これまでの日常では、決して味わうことができない快感を得ていた。
ひとし
『次のホテルに事情を説明したら、1泊分の料金を払えば泊まれるらしい。
車で次の目的地へ急ごう。』
ひとしは冷静だった。
寝言で、オスイチがどうのこうのと言っていた割には落ち着いていた。
ひとし
『たけしくんは、寝てる?』
そうね、とだけひとしに返して
たけしの方を見る。
私の横で眠るたけしの寝顔を見つつ、今日起きたことを思い返すと
さすがに胸が痛んだ。
では、出発しましょう!!
と、ひとしはノリノリで車のエンジンをかけた。
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(俺の名は『たかし』)
ちっ…
全く朝からどこへ行ったんだ。
使えねえなあ。
ベランダから、見る景色はいつもと変わらない。
いつもと変わらないが、【絶景】だ。
親父が死んだ保険金で買ったマンション。
親父の事は大嫌いだったが、大金を残して死んでくれたんだからもはや、何も言うことはあるまい。
俺の名前はたかし。
妻の名は京子で、一人息子のたけしと3人暮らしだ。
大手の超一流会社に就職し、同い年ぐらいがヒイヒイ言っている住宅ローンもない。
他人から見てみても、
俺の人生は安泰だ。
人生は安泰…。
…
…
果たしてそうだろうか?
…
朝早くに起きて満員電車に揺られ、会社へ。
朝礼が毎日あり、社員全員
売りまくれ!
売りまくれ!
売りまくれ!
と、新商品を自分の頭上高くに掲げながら大声で毎日15回。
日中に外回りを済ませて会社に帰ってきたと思ったら
無駄な会議が夜の20時から。
社長はコロナの状況を全く理解もせず、社員の出社を求める。
退勤はいつも23時で、帰宅は24時。
その後に残った仕事をこなしていたら、寝るのは深夜2時にもなる。
基本、休日はたけしの学校の集まりに行かなくてはならない。
これが俺の日常だ。
…
…
…昭和ですか?
いや、本当に超一流企業ですか?
ブラックですか?
もうすでに時代は令和だ。
この同じルーティーンの繰り返しに、俺は飽き飽きしていた。
かといって、自分で起業をする事は考えにない。
莫大な借金こそしなかったが、毎日の資金繰りで頭を悩ませていた親父の様にはなりたくはない。
でも…