パチンコパチスロ天下一日記バトル
著者:村上次郎
今の世の中は打算にあふれています。
他人を傷つけても
自分が傷つかないように
スマートに生きる事がもてはやされているように思います。
勝てば笑い。
負ければ泣く。
本当に気持ちの入ったパチンカーがどれだけいるでしょうか。
パチンコは回れば勝てる?
バカを言っちゃあいけません。
あの優しかったバアさんが私に嘘をつくはずがありません。
バアさんは言っていました
「パチンコには波がある。」
「波理論は実在する!」
パチンコは波に乗れば勝てるのです。
...。
頼むバアさん、私に力を。
春の冷たい雨が身に染みて
ふと空を見上げると
天国のバアさん(妻)は寒い思いをしていないだろうかと思うことがあります。
(バアさんや天国にパチンコはあるかい)
(ちゃんと大当たりしているかい)
雨雲を見上げて思わず問いかけてしまう自分がいます。
民家の軒下で雨宿りしているカラスたちから冷たい視線を感じがますが
おそらく気のせいでしょう。
最近では「自分が死ぬこと」について考えてしまいます。
なにも悲観的になっているわけではなく
私はもう81歳なので、いつ人生の閉店打ち止めになってもおかしくはありません。
死について考えたとき
私の頭に浮かんでくるのはこの言葉です。
「虎は死んで皮を残し、武士は死んで名を残す。」
素晴らしい言葉です。
人はただ生きるのではなく、何かを残せる尊さがあるのだと思います。
では我々年金パチンカーは死んで何を残すのか。
...。
貯玉でしょうか。
バアさんが死んだとき、残された貯玉は38玉でした。
みなさまこんにちは。
年金崩壊、待ったなし。
年金パチンカーの村上次郎です。
最近はあまりにも北斗無双が当たらないので
なにか当てるためのヒントがあるかもしれないと
休憩コーナーで北斗の拳の漫画を読んでみました。
81歳の年金パチンカーにとって漫画の文字はあまりにも小さく
読破するのは至難の業でしたが
登場人物たちの烈しい生き様に感動しました。
そして数々の心に突き刺さる台詞。
特に記憶に残りましたのは
「お前はもう死んでいる」です。
...。
高齢者に言ってはいけない言葉だと思いますが
深い言葉です。
たしかに私は今
今というよりまだ
生物学的には生きています。
ですが「人として十分に生きているのか」と自問自答する必要はあります。
それについて考えさせられる出来事もありました。
というのもつい先日
夜道でカギを無くし家に入れなくなった事がありました。
この世の終わりかと思いました。
こんな時に限って同居中の孫は旅行中。
音沙汰なしのバカ息子は失踪中。
頼みの綱のバアさんは天国。
思えばバアさんは、ホールの開店の並びで命を落とすほどの生粋のパチンカーでした。
そして私は、閉店まで打ち続けた末家に入れなくなり命を落としかけている立派なパチンカーです。
「ようやくバアさんと肩を並べるところまで来れたかな、ふふふ。」
などと思ったりしましたが
パチンコで負けた日の夜に死にたくはありません。
どうしたものかと立ち尽くしていると
近所に住んでいてホールの常連さんでもある吉澤さんが現れました。
吉澤さんの手には元田中夫人の手が絡みついていました。
私は見てはいけないものを見た気がしました。
実は私がホールで仲良くしている常連グループ内で
熟年離婚からの裁判沙汰が発生しています。
人の業とは恐ろしいものです。
どうかみなさまは、くれぐれもお気をつけ下さい。
田中夫婦は仲良く1円パチンコを打ちにきていた老夫婦でした。
しかしある日。
田中夫人が間違えて座った4円パチンコが500円で大爆発。
最終的に12万円の大勝利だったそうです。
それ以来、田中夫人は4円パチンコを打ち続け連戦連勝。
そのうち4円パチンコの常連であった吉澤さんと仲良くなりました。
吉澤さんは言ったそうです。
『1円パチンコでちまちま遊んでいる旦那と別れて俺と一緒になれ』と。
私、村上次郎は4円北斗無双を信条とする者ですが
同じパチンカーとして1円パチンカーを見下す行為は
恥ずべき事だと思います。
しかし連日の勝利に浮かれているところもあったのか
はたまた性〇が余っていたのか
田中夫人は吉澤さんの誘いに乗ってしまいました。
熟年不倫の詳細は書きたくないので省きますが、二人は逢瀬を続けたようです。
そうなると田中の旦那も黙っていません。
裁判となりました。
この裁判は係争中ですが
第三者として冷静に考えますと
年金パチンカー同士の痴情のもつれを裁く事になった裁判官には
同情を禁じ得ない部分もあります。
そんな事があり、吉澤さんには良い印象を持っていませんでした。
軽蔑さえありました。
しかし夜道で立ち尽くしている愚かな私を見て、家に入れなくなった事情を聴くと
「風邪ひくと大変だから」と家に招き入れてくれて
一晩泊めてくれました。
そして朝になると一緒にカギを探してくれました。
こういう優しさを持っている人だとは思わなかったので
自分がどういう感情を持てばいいのか
私は戸惑いました。
吉澤さんは言いました。
『まあ俺のことを良く思っていない人もいるだろうけど、困ったと時は助け合いだ』と。
上手く表現はできませんが吉澤さんからは生きているという感じがしました。
もちろん吉澤さんの不倫は責められるべきものですが
吉澤さんの優しさは私の人生に深く残りました。
人が生きるというのはそういう事なのかもしれません。
自分のためだけに生きるのではなく相手に何かを残していくこと。
バアさんは私にパチンコというものを教えてくれました。
もしかしたらバアさんは自分が死んだあとに私が寂しくないように
私にパチンコを残してくれたのかもしれません。
そしてこの本も残してくれました。
とんでもないものを残してくれました。
この本に書かれているようにパチンコを打っていたら
ある日、全力で孫に止められました。
私が
『いや、バアさんが私を騙すような本を残していくハズがない』
と反論すると
こちらの本を見せてきました。
孫は
『これもバアさんが残していった本なんだ
オスイチが狙えるのになんで1パチを打つんだ
おかしいだろ!』
怒りに震えながら涙ぐんでいました。
孫もまたオスイチの犠牲者だったのです。
許すまじ!谷村ひとし!
と怒りに震えましたが
憎しみは更なる憎しみを生むだけです。
ここで憎しみの連鎖を断ち切らねばと思い、ぐっと我慢しました。
孫はいつでも私を正しい方向へ導いてくれます。
私をオレオレ詐欺から救ってくれました。
私にパチンコ日記を書くようにすすめてくれました。
そんな優しい孫に私は何を残せるのでしょうか。
先日は孫の誕生日でした。
夕食に何を食べたいか聞いたら
「回らない寿司!」
と言うのでこちらを買ってきたところ
「またパチンコで負けたんか、おい。」
と言われました。
それ以来、孫が冷たいのです。
私は孫に何も残せないのかと、かなしくなりました。
しかしその時、北斗の拳のある台詞が私を突き動かしました。
「かなしみを知らぬ男に勝利はないのだ!」
私は気づきました。
「そうか、今なのか」と。
いまパチンコを打てば勝てる。
かなしみを知った私はホールへ急ぎました。
もちろん座ったのは北斗無双。
鉄板の角台です。
いざ打ち始めましたが当たりません。
当たる気配がありません。
いつもと同じです。
こんな時に脳裏によぎるのはあの言葉です。
『気合で当てろ!』
生前にバアさんはよく言っていました。
『当たりを待つだけではダメだ、気合で当てにいけ』
私はハンドルから(当たれ〜当たれ〜)と念を送り続けました。
すると当たりました。
さすがバアさんです。
3日ぶりのSTが始まりました。
このSTを爆発させるために3日連続の凹み台の上げ狙いです。
私の経験上、波はすぐそこまで来ています。
しかしどうしたことでしょう。
全く当たる気配がありません。
残りSTが50回を過ぎてからは
STが1回転進むごとに私の寿命が削られる思いでした。
もはやこれまでか。
私はここまでの人間なのか。
一生をかけて積み立てた年金を、一生の最後に溶かす人間なのか。
なんて下らない人生なんだ。
パチンカーとして恥ずべき事ですが
この時の私はパチンコを憎んでいました。
もう画面を見るのも辛くて、下を向きながらハンドルを強く握っていました。
手の震えも止まりません。
しかしこんな時でも思い出すのはバアさんの言葉です。
『波を信じないものに未来はない』
そうだ、海物語の荒波を乗りこなしていたバアさんを思い出せ。
頼むバアさん、私に力を。
(ジイさんや・・・)
「!?」
(あんたはよくやった・・・)
「そ、その声はバアさんか!?」
(パチンコなんて世間様では下らない事だと思われているかもしれん・・・)
(でもその年になって大好きなものがあるってのは・・・)
(大事なことだと思わんかい・・・)
(自分の信じるパチンコを行けばええ・・・)
「ば、バアさん!」
私は思わず顔を上げました。
その時です。
この当たりが伝説の始まりでした。
完全に波が来ていました。
この連荘を消化しながら私は冒頭の言葉をかみしめていました。
「虎は死んで皮を残し、武士は死んで名を残す」
では私のような年金パチンカーは何を残せるか。
それは「言葉」ではないでしょうか。
孫が言うには
今は動画の時代で文字文化は廃れていくとの事ですが
こちらのマックス様では文字文化を大切にしていると聞きました。
言葉というのは遥か昔の先人たちから受け継がれてきたものです。
人は死んでも言葉は残ります。
マックス様にも今まで多くのライター様がいたと聞きましたが
連載が終了しても彼らの言葉は今でも読者様に残っているのではないでしょうか。
花は散る直前がもっとも美しいといいます。
ですが言葉の花は永遠に咲き誇ります。
パチンコ業界の厳しさは我々年金パチンカーにも伝わっているほどです。
そんな今だからこそ、どうか皆様の力で
パチンコ日記という不朽の花を育てていこうではありませんか。
私の墓標は村上
死すならば確変の荒野で
この日記は賞金10万円対決企画となっております。
今回の対決準決勝グループの3作品です。
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