ハンドルネームは:【ツヨシ】

準決勝B─2話
HN:ツヨシさん
【50%50%】





ここは箱根。


第3新東京市。


新世紀エヴァンゲリオンの舞台となった場所。




大湧谷。

大涌谷


碇シンジ君が思い悩み、

宛てもなくさ迷った場所。



パチンコ新世紀エヴァンゲリオン。


俺がパチンコに魅せられた初めての台。


原点に帰り、

第3新東京市に程近い場所でエヴァを打ちながら、

昔の話を思い出そうと思った。




エヴァ7の裏技をご存知だろうか?


リーチ終盤、

カットインの際にボタンを押すのだが、

『そのリーチが確変に当選していた場合に限り』

カウントダウンのギリギリでボタンを押すと、

インパクトフラッシュが鳴り響く。


カヲル


この裏技は確変中も有効なので、

是非お試し頂きたい。


ここで大事なのはギリギリまで待つ事。


辛抱する事。



「あの時もう少しガマンしていれば…」

今でもたまに思う。





さおりが人生で初めてパチンコを打った日。


彼女は最初の500円、

初めてのリーチ、

初めての魚群で、

見事確変を射止めた。


ビギナーズラックとは凄いもので、

その後も連チャンに次ぐ連チャンで、

初当たりも異常なまでのヒキ。


結局、

閉店間際まで打ち切り、

換金額はなんと10万円を越えた。




さおり
パチンコって儲かるんだね〜♪


まぁ俺は中々の負けだったのだが、

そんな事はどうでも良い。


初打ちで勝たせてあげる事が出来た安堵の気持ちと、

パチンコとは言え、

久し振りに女の子とデートが出来た嬉しさで心は満たされていた。


それからは、

多い時は週二回くらいのペースでパチンコ屋デート。


自然と二人の距離も縮まり、

パチンコ屋以外にもよく二人で出掛ける仲になっていた。




『さおりは彼氏持ち』

そんな思いは有るには有ったが、

そこまで常に意識もしていなかった。



そんな付かず離れずの関係がしばらく続いたある日。


いつもの様に『新海物語』を打ち終え、

店を出ようとした二人の前に、

『新台入れ替え』

のポスターが目に飛び込んできた。




大ヤマト2〜確変68%の世界へいざ発進〜


確かそんな煽り文句だったと思う。


当時は確変=50%が常識の時代。


時短が付いただけでも衝撃を受けていた所だったのに、

その上、確変突入率68%と言っている。




さおり
「あたし、これ絶対打ってみたい!」


当然、

ギャンブル好きの俺としてもそそられるスペックだったが、

そのポスターの右下に小さく書いてあった大当たり確率を、

俺は見逃さなかった。




『大当たり確率 約1/500』


目を疑った。


「二倍ハマっただけで1000回転じゃないか…」


目を輝かせているさおりの手前、

声には出さなかったが、

とんでもない台が出たもんだと、

急にやって来たパチンコ新時代に少しばかり恐怖した。





そしてその次の週末。


俺はあまり乗り気ではなかったが、

さおりに付き合い、

新基準スペック機『大ヤマト2』を打つ為、

開店前からホールに並んだ。


大して大きくないホールに100人近くの行列。


俺がパチンコを始めてから、

パチンコの新台目当てにこれだけの行列を目にするのは、

初めての経験だった。


その日で『大ヤマト2』を導入して一週間が経っていたのだが、

その傾向として、


『2000回転はまりは当たり前』

『10連チャン以上が頻発』

『一撃5万発出た台がある』


と、そのスペックに嘘偽りは無く、

およそ今までのパチンコからは考えられない、

非常識的な台だった。



ちょくちょくホールを覗き、

『大ヤマト2』の荒さを目にしていた俺は、

その日はいつもの『新海物語』に座り、

さおりは予定通り『大ヤマト2』を打つ事となった。



この日店内は大盛況。


釘の方も大開放で、

俺の『新海物語』は千円で30回転も回った。


当たりにも恵まれ、

昼過ぎには安定の持ち玉遊技。


一息入れる為、

コーヒーを買ってさおりに差し入れに行った。




『800回転』


さおりの頭上のカウンターは、

朝一からのハマりを示していた。


と言ってもまだ確率の二倍もハマっていない。


回りも良さそうだ。




ツヨシ
「少し休憩しない?」

と誘ってみた。



さおり
「当たるまで頑張る。」

との答え。


表情もかなり強張っている。








暴走


どうやらタイミングが悪かったらしい。


そそくさと『新海物語』のシマへ引き返した。



その後も俺の台はハマらず、

でも続かずの繰り返しだったが、

ジワジワと出玉を増やし、

「頃合いだな。」とヤメ時を探していた。



そこでおそるおそる、

さおりの様子を見に行くと…





1900回転


とても声を掛けられる状況ではなかった。



が…、


遠目で見ていたさおりの台に、

『大ヤマトフラッシュ』が発生!!


役物がフラッシュと共に高音で鳴り響く、

どこで発生しても激アツの予告だ。


この一週間、

何度もその予告から当たっているのを目撃した。



俺は咄嗟にさおりへ駆け寄り、

「当たるといいね!」

と声を掛けた。



ギャラリーを背に、

二人固唾を飲んでリーチを見守る。



も…、


虚しく外れ。


それと同時に、さおりはボタンを強打。



今日コレ五回も来てるのに。何で、何で…


今にも泣きそうな彼女に、



ツヨシ
「もう、帰ろう」

と声を掛け、

沈黙の中二人は帰路に着いた。



いきなり打ちのめされた『大ヤマト2』。


それでも彼女はこの台を追い続けた。


俺は俺で適当に『新海物語』を打っていたのだが、

暫くして出た『大ヤマト2』に似たスペックの新機種、

『新世紀エヴァンゲリオンZF』

にのめり込んだ。



エヴァンゲリオンと言うアニメも、

パチンコを打ったきっかけで観る様になった。


これが中々面白い。


それまでのパチンコには見ることが無かった、

アニメ独特の世界観を、

見事にパチンコ演出に組み込んでいた。




その日も朝一から『大ヤマト2』で相変わらずハマり倒すさおり。


俺はまた彼女と隣同士でパチンコを楽しみたかった為、

さおりを『新世紀エヴァンゲリオンZF』に誘った。



彼女は渋々だったが、

それから数時間、

一緒にパチンコを楽しむ事が出来た。



互いに大当たりもし、

適当な所で出玉を流した。



俺が先に換金を済ませていると、

後からやって来たさおりが、

怒り狂った顔でまくし立てて来た。




さおり
『あたしが打ってた台、20連チャンもしてる!?ツヨシが変な台に誘わなければ、アレあたしのだったのにっ!!




閉口した。


確かに、変な台に誘ったのは俺だ。


しかし、

あのままさおりが同じ『大ヤマト2』を打っていたとしても、

同じ20連チャンをしていたとは限らない。


それがパチンコの仕組み。


だがビギナーのさおりの理論は真逆。


むしろ俺のせいで取り返せず、負けたのだ。



そしてその表情は、

ここの所ずっと『大ヤマト2』で大負けしている原因も、

俺のせいにしている感じだった。




ツヨシ
「はぁ?意味わかんないし。自分の責任だろ!?下らねぇ事言ってんじゃねぇよ!!」


普段の自分なら我慢して、耐える所だった。


だが、何故かこの時は許せなかった。








シンジ


辛抱出来ず、怒鳴ってしまった。


大袈裟かも知れないが、

パチンコではなく、

二人の時間を楽しみたいと思った自分の気持ちを、

踏みにじられた気分だった。



彼女への気持ちを、全否定された気分になったのだ。


彼女はうっすら泣いていた。


そんなさおりを見てふと我に帰り、

パチンコを教えた自分の責任を重く感じた。


何か声を掛けようとしたが、

迷ってる間にさおりは早足で立ち去ってしまった。




そしてその夜、

一通のメールが届いた。



パチンコ、特に『大ヤマト2』にハマって仕事も休みがちな事。

彼氏には愛想をつかれて、別れを切り出された事。

さっきはあんな事を言ってしまったけど、本当はツヨシにいつも感謝している事。

そして出来たらこれからも付き合って欲しい事。



全てを伝えてくれて嬉しかったが、


反面、

結構な勢いで怒鳴ってしまったので、

正直、引くに引けない所があった。



結局その日、

そのメールには返信せず、

それから二人は会う事は無くなった。




確変、単発。


50%、50%の『新海物語』を打っていたあの頃。


俺の彼女に対する気持ち。


彼女の俺に対する気持ち。


50%、50%だったと思う。


その均衡を破るかの如く現れた新基準機。


俺達の互いへの気持ちに変化をもたらした。





「久し振りに、パチンコ打たない?」

彼女にメールを返したのは、

それからだいぶ時が過ぎた頃だった。



返信はどうでも良かった。

ただの自分への区切り。


彼女への申し訳なさを、

勝手にリセットしたかっただけだ。





さすが第3新東京市。


エヴァ7のシマが大盛況だ。


隣同士で打つ夫婦やカップルの笑顔が眩しい。


何故、あの時怒鳴ってしまったのか。


何故、あの時辛抱出来なかったのか。








笑えば


俺は、笑えなかった。





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