ハンドルネームは:【玉山】

予選C1話
HN:玉山さん





オレには何もない。



金もない。
彼女もいない。
これと言った特技もない。



好きなことと言えばパチンコ。

だから今、オレはパチンコ屋のホールスタッフとしてバイトしている。

毎日毎日雑音の中を走り回り、バイト代を貰う。



貰った給料でパチンコに行く。



ただそれだけ。

正直これからの自分なんて考えたくもない。

どうせ希望なんて見えやしない。

行き当たりバッタリな人生。



希望



はんっ!!発展すらしない希望なんて持ってたってしょうがねぇ!!

なんて心底ちっぽけな心の持ち主。



「ちょっと兄ちゃん!!何ボーっと立ってんだ!!玉が出てこねーぞ!!」



常連の牛乳屋だ。

ハッキリ言ってオレはこの爺さんが嫌いだ。

というか、この店の常連客全般が嫌いだ。

オレの働くパチンコ屋は非常に年齢層が高く、小うるさいご年配ばかりが来店する。


「おい!今キュインって鳴ったのに外れたぞ!!」



なんて言われたこともある。

マジで勘弁して欲しい。



忙しい時に限ってこういうのが多い。


「玉山君!大海の島お願い!!」



主任から無線で指示が飛ぶ。


はぁ・・・海か・・・。

きっとまた牛乳屋だろう・・・・。



走って大海の島に飛び込む。

牛乳屋かと思って台ランプの下を見ると・・・


「あ、ルミさん・・・。」


スタッフの中で「ルミ」と呼ばれてるこの女性。

ご年配の常連客が多いこの店で、一人だけ一際若さを放った女性だ。

おそらく20代後半。

スタイルも良く、おそらくスッピンなのだが、なんともまぁ、清楚というかなんというか。


なぜスタッフがルミと呼ぶかって言うと、一度彼女が会員カードを落としたことがあるから。

ホールの常連の中でも一番の美女だったから、みんなすぐに名前を覚えたわけだ。



「すいません、玉詰まりですね。少々お待ちを。」



こういう時に限って玉が流ない。

イスの後ろで、オレの作業を眺めるルミさん。



やばい、なんかオレ今カッコ悪い・・・・。



すると、台裏の玉と玉の間に小さなネジがキラリ。

原因がわかって、少しホッとするオレ。

イカンイカン、早く除去せねば。


無事に玉が流れ、ルミさんに一礼。


「すいません、お待たせしました。」



ルミさんは何も言わず、ただニッコリと微笑んでくれた。

うん、やっぱすごく美人だ。

そういえばこんなに近くで見るの初めてだな・・・。

肌もすごく綺麗、潤んだ唇はとても20代後半とは思えない。

ボタンを押す指先も細くしなやかで・・・・


あ・・



指輪・・・。



そうか、結婚してたんか。

近くで見て知った真実。



だ、だから何だよ!!

別に結婚してようが何かあるわけじゃない。



何となくモヤモヤした気持ちのまま早番が終了。

いつの間にかルミさんの姿は無かった。



帰ったのかな。



いつも通り、バイト終りで近隣のホールへ直行。

今まで騒音の中働いてたというに、また自ら騒音の中に足を踏み入れる。



いいんだ、別に先のことなんて考えてない。



ホールをぐるっと一回り。

相変わらず牙狼の客付きが良い。

今日はルミさんを近くで見れたことだし、なんだか簡単に当たりが引けそうだ。

なんてとんでもないジンクスを自分自身で唱え、着席。



お〜、意外と回るやないか。これなら気分良く打てそうだ。



しかし、このホール、やけにいい匂いがするなぁ。

今までヤニ臭いホールを走り回ってたからか、別の店舗の匂いが新鮮に感じる。



ん〜??しかし香水くさくないかぁ?



ふと隣を見る。

オレは驚いた。思わず声が出そうなくらい驚いた。


あっ!!


まぁ、実際出ちゃったんだけどもね。

そう、隣に座ってたのは紛れもないルミさんだった。



あぁ!A店の!


あ、どうも・・・。


バカバカバカ!!

せっかくあっちから話しかけてくれたのに何だその無愛想な態度は!!



しかし、1日でこんなにルミさんに接近出来るとは・・・。

今日は何だかいい感じな気がする。



その後は特に会話も無く、お互い黙々と回していく。


そんなオレの脳裏にふとこんな考えがよぎった。



【話しかけたら意外と仲良くなれるんじゃないか?】



ダメダメダメ!!仲良くなってどうすんだ!!旦那だっているはずなのに!!

ってか俺みたいなモヤシっ子がこんな美女と仲良くなれるわけがないだろう!!



などと一人脳内格闘を繰り広げていたオレがふと画面に目をやると・・・



牙狼剣



ゴクン・・・。



これが、当たったら・・・・。



よし、これが当たったら、話しかけてみよう。



「あの電柱まで息止めて行けたら今日はラッキー!!」



なんてよく考えてるオレだから出たこの発想。

小学生以下のこの発想。



当たり



当たっちまった・・・・。



嬉しい反面、それ以上に今から話しかけることにドキワク状態なオレ。

運良くルミさんの台も大当り中。

きっと機嫌は悪くないはずだ・・・。



オレ「あ、あの・・・よくこの店でも打ってるんですか??



ルミ「え??」



うわぁぁぁぁぁああ!!

何これ!!めっちゃ不審に思われとるやん!!やっぱ止めとけば良かった!!



ルミ「あ、うん、アナタの店で出なかった時はこっちに来てるよ(笑)」




お、おぉぉぉぉぉ・・・・セーフ・・・。

良かった・・・何とか会話成立!!



オレ「すいません、オレの店出ないですよね?僕もこっちの店の方が出ると思います(笑)」



ルミ「アハハハ!何それ〜!自分の働いてるお店なのに、超ウケる〜♪」




わ!わ!笑ったーーーーーーー!!




これは嬉しいぞ!おまつが笑った時より嬉しいぞ!!



その後は、お互いにどの演出がアツいだの、どの店は回るだの、ほぼパチンコの話で盛り上がった。

そして二人の後ろには見事なドル箱タワー。



持ってる。今日のオレは何か持ってる。



なんだかこの調子で行けば連絡先くらいは聞けそうな気が・・・。



オレ「この5番目のセグランプが消えてたら魔戒濃厚なんですよ♪」



ルミ「へ〜!そうなんだ!!いい事知った!ありが・・・・・」



突然会話がストップ。



オレ「どうしたんですか??」



無言のルミさん。

よく見ると額にうっすら汗が滲んでいる。

少しずつ顔色が青ざめていってるのがわかった。




ガシッ!!



ルミさんの頭にゴツく、大きな手が伸びてきたのがわかった。

その手はルミさんの髪の毛を鷲掴みにし、毛をむしり取るかのごとく引っ張った。




「お前、こんな時間まで何しとんじゃ??」



ドスの効いた声。

旦那だ。一発でわかった。



ルミ「あ、ご、ごめんなさい」



旦那「人が汗水流して働いとるっちゅーのに、お前何しとんじゃ!ボケが!!」



うるさいホールの中でも響きわたるくらいの罵声。

旦那は近くにいた店員を捕まえ、すぐにルミさんの玉を交換しろと荒々しく叫んでいた。



僕はただ、髪を引っ張られ、顔面蒼白なままホールから引っ張り出されていくルミさんを呆然と見ていた。




つづく。





↓投票はコチラから↓
MAX投票所
天下一2トップに戻る



>>友達に教える
天下一MAXライター会2

パチンコセグMAX

パチンコセグ判別サイト