HN:物乞い太郎。


【舌打ち太郎】と【魚のおじさん】


人生というものが、日々の積み重ねで成り立っているものだとしたら、一日二日で人間が変わるなんていうのは、初めから無理な話。


だから、汚れた右腕をへし折ったところで、俺の物乞い人生が終わるなんて思っていない。

俺は、それを覚悟の上で自分の汚れた右腕をへし折った。



ポキッ
とな


これは決意表明

自分自身に対しての決意表明

折れた右腕を見る度に、これまでの情けない物乞い人生を思い出せる。


もう、戻りたくない物乞い人生


これまでの物乞い人生にサヨナラするために、今するべき事


それは、捨てる事

物乞いで収集したモノを捨てるべきだ!!

これが、はじめの一歩だ!!


そんな…
それだけ…

なんて思わないで欲しい

俺が収集したモノは、ゴミではない



お宝だ!!

46型の液晶テレビだってある!!

生活していく上で無駄なモノは、必死な物乞いで手に入れたモノだろうが、捨ててきた。


俺は物乞い太郎だが、ゴミ収集は趣味じゃない。


分かるか!?


真新しい液晶テレビを捨てる気持ちが。

未使用のダッチワイフを手放す気持ちが。


ゴミとは程遠いモノしかないのだぞ!!


物乞い太郎とは、名ばかりで。

普通以上の生活環境の中に、俺はいる。


住んでいるマンションは、オートロック。

車だって持っている。

明るく幸せな未来のための、乳母車だってある。

三輪車だってある。


その全てを捨てる。

これが、【物恋田郎】の新たなスタート。


『ポキッ』とやらかした右腕をかばいながら、部屋の整理を始める。


『まぁ、随分と集めたものだなぁ』


変な達成感がある。

ここにあるものは、これまでの物乞い太郎の人生なのだから。


さて、清算していこう。

これまでの人生を…


まずは…


ナプキン

【横漏れ防止】で有名なやつ

これは捨てるべきなのか??


もちろん、自分のために取っておいたものではない。

いつか来るであろう、幸せな生活のために取っておいたモノ。


ちなみにパチンコを打っている時に、一回だけ装着してみたが…

許容範囲が狭すぎて…

横漏れ防止どころではないだろ…

と緊張して、用を足せなかった…


このナプキンが、俺の家に必要になる時は訪れるのだろうか?

普通に、ナプキンが俺の家に置いてある生活は訪れるのだろうか??

結婚出来た時には、すでに相手の生理は終わってました。

なんて事になっていないだろうか?


これでは、【物乞い二郎】の誕生が叶わない。

って俺は、【太郎】じゃなくて【朗】だった〜〜〜!!


とりあえず、このナプキンは保留だな。

明るい未来のための保留


先を読む力

保留先読み予告


保留先読み予告が流行っているのも、明るい未来を示唆しているからだろう。


銭形平次のST中、残り10回転で赤保留が出てきた時の気持ち。

左打ちに戻す準備をしていた虚無感から、一気に明るい場所に連れていかれる。


人間は未来を知りたがる生き物


セグ判別をしたがる心理も、人間ならば当然か。

少し我慢すれば、自然と分かるのに、セグ判別をして少しでも早く今の状態を知りたがる。


人間とは、そういう生き物。



ところで…


この生き物はなんだ…??


物乞いした覚えもない…


気味が悪い…

なんて面構えをしていやがんるんだ…


判別の必要はない

こいつは、間違いなく通常だ…

2R通常だ…



縁起でもねぇ

これから、パチンコを打ちに行こうって時に…


捨てよう!!

今すぐ、捨てよう!!

そう決めたはいいが、これを裸で持ち運ぶのは危険すぎる。

デンジャラス


暴走・爆発の可能性がある…

いつどこで、暴れ出すか分かったもんじゃない…


そういった意味では、判別が必要なモノだ。



いや、ちょっと待て!!

これはヤバイ!!

暴走・爆発する可能性があるものが、家に堂々と置いてあるとか有り得ない。

判別とか、ウダウダ言ってないで、至急捨てに行かねばならぬ!!

だが…
捨てる前に誰かに見られたら、偉い騒ぎを巻き起こしてしまうだろう…


近くにあったコンビニ袋に入れて、家を出る。


そうだ!!

パチンコ屋に行く途中にある、あの畑に投げ捨てて行こう。


なんか、中学校時代にエロ本を捨てに行く時みたいだなぁ

懐かしいなぁ

楽しみだなぁ

ワクワクだなぁ


目的の畑の手前にて
コンビニのゴミ箱という、絶好の場所を発見するが、朝帰りのヤンキーがヨーグルトを食べていたので素知らぬ顔をして通り過ぎる。

やっぱり、こういったモノを捨てるのは、俺の地元では畑と決まっている。


畑の横道を口笛吹きながら…
慎重に、前後左右を窺いながらモノを捨てようと…

コンビニ袋を振りかぶった瞬間




畑を耕す老人と目が合う。


『おはようさん』

『おっ…、と』
『肩の調子があれだなぁ…』
『お…、お、おはようございます。今日もご苦労様です。美味しそうなトウモロコシですね、これはまた。味見なんてしてみたいなぁ。僕』


『食べてみるかい??』

『えっ!?いいんですか!?』
『肩凝りに効きますか??』



物乞い成功!!

畑は、ゴミを捨てる場所じゃない。


やはり、人間はそう簡単には変われない。



一旦、モノを捨てる事は諦め

パチンコ屋に向かう。


パチンコ屋の熱気に飲み込まれ、危険物所持者である事を忘れてしまう。


パチンコとは、そういったもの。


実践機種は銭形平次


物乞い情報によると、今はこれが一番勝てる機種らしい。


物乞いとは

物を乞う事以外にも

物を盗む事も含まれる。


窃盗はしないよ。


パチンコの技術を盗む。

俺は、物乞い精神で作り上げたチラ見の技術で、パチプロの打ち方を習得していた。


そして、今日がその初実践日。



まずは、保留3止め。

保留が3つ貯まったら、打ち出しをやめる。

保留3状態でスーパーリーチがかかっていたら、数発打ち出す。

その数発がヘソに入ってくれたら


ありがとう



次に、ステージ止め

ステージに玉が乗ったら、打ち出しをやめる。

ステージは、ヘソに向かう直結ルート。

止める喜び。



そして、最後は

パチプロ達が、躍起になっているST中の止め打ち、オーバー入賞。

ハンドルを、【弱め強めにガチャガチャする】やつ。


これは、当たってからでないと出来ない。


まずは、当たりを目指そう!!



物乞い情報をもとに、ガチャガチャするイメージトレーニングをしながら回して行く。


ちなみに、この日の軍資金は完全なる自分のお金。


小学校時代から、貯めていたお年玉貯金。

これなら、誰からも文句は言われない。

言わせない。


7000円使ったところで、明るい未来を示唆する保留先読み予告が発生する。

弱めの青色保留が左右に揺れながら、俺の未来を応援してくれている。


ありがたい事だが…

お前では、まだ不安は拭えない。

赤く揺れてくれ!!

頼む!!


保留を凝視する。


お前が赤くなるのを、俺が見届けてやる!!

だから、頑張れ!!

いっけ〜〜!!






【赤揺れ進化】を期待したが、叶わず…


だが…
青揺れ保留の前の保留にて、3つの図柄が…


『てぇへんだぁ!!』

『てぇへんだぁ!!』

『てぇへんだぁ!!』


と、親父が騒ぎ出す。




俺の未来は明るかった

青揺れ保留、ありがとう!!



物乞い太郎、銭形デビュー

初めての銭形

銭形童貞


よしよし!!

アタッカーに8個入れて

弱めにして

この辺で大丈夫かな??


1個弱めに打ってから…

一気にハンドルを…





うらぁ〜〜〜〜!!







ポキッ
折れ



あっ…

やっべ…

右腕折れてたんだゎ…


まぁ、いい

一度、捨てた右腕

未練はない




って、痛ぇよバカ野郎!!

右腕は痛いけど、目の前には金という名の確変がある。


右腕も、テレビも捨てたけど。

確変だけは捨てられない。

パチンコ打ちなんて、こんなもの。


そして…
こいつも、捨てられずのままだった







魚


魚のおじさん

捨てる機会を完全に逃した。


困った。


更に困った事に、オーバー入賞というやつが上手く出来ない。

俺の下手っぷりを笑っている、魚のおじさん。

隣のパチプロも、おじさんと一緒に笑っている。


チッ

笑いたきゃ、笑え


チッ

また失敗だ


チッ

弱く打ち過ぎて、左打ちしちまった


チッ

今度は上手く行ったと思ったら、アタッカーの右側でこぼれていきやがった。


チッ

連チャンはとまらねえが、舌打ちもとまらねえよ



いつの間にか、大量出玉を獲得してたが、物乞いパチンコもしなかったが…

舌打ちがとまらない


連


舌打ち太郎

これだけ連チャンしたのに、舌打ちとか…


【物乞い太郎】の次は、【舌打ち太郎】

次から次に忙しい。

そして、未だ捨てられずにいる、魚のおじさん…


チェッ!!

いい加減、邪魔だ…


ゴミ箱に捨ててやろうと思い、連チャンが終わった所で席を離れる。


なんだよ、これは…

なにが可笑しくて、そんなに笑ってるんだ!?

だが、もうここまでだ!!

これからは、空き缶と仲良くやってくれ!!


ゴミ箱に放り込もうとした瞬間…



魚のおじさんと、店員さんの目が合う。

店員さんに気付かれたのだ…


不審物を捨てると思われているようだ…


一瞬、焦ったが…

これは、またとないチャンスだ!!

思いも寄らぬチャンス!!


『調べてください。磁石とか入ってませんから。完全なる木製ですから。彼、笑ってますけどね』
『差し上げますよ。あなたに』
『遠慮なく受け取ってください』

『いらないです』
『その前に、あなた怪し過ぎます』
『右腕折れてるし、魚のおじさん持ってるし、生のトウモロコシ持ってるし』


チッ


結局、俺は舌打ち太郎

隣には、魚のおじさん


トイレに行き、大便の方に入り、放置しようとするが…

満杯…

消臭剤の隣に、置物的な感じで自然に放置したが…


掃除のおばちゃんに

『お兄ちゃん、忘れ物よ〜〜!!』


チッ

だめだ、これ…


今日分かった事

オーバー入賞とか難しい事をしようとすると…

俺は、舌打ちが止まらなくなる。


舌打ち太郎

魚のおじさんに向かって舌打ちをするが…


彼は笑っている


困った



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