HN:元気マン


小さな幸せ



刺激がほしい!


これが僕がパチンコを打つ理由。


大当り!

連チャン!

○万発!


これらの言葉を聞くだけで、ドキドキしてくる。

逆に言えば、日常に物足りなさを感じているのも確かだ。


毎日会社へ、満員電車に揺られ1時間。

痴漢に間違われないように、常に両手はつり革へっ!!


そんな、無防備な僕はスリにあった……


家に帰っても、ご飯とお風呂を選ばせてくれるような、裸エプロンの妻もいない。

そもそも、彼女がいない。


夜はビールと弁当を広げて、シルシルミシルを見るのが唯一の楽しみ。


週一の休みは、そんな日常を忘れるべく、ほぼ必ずパチンコを打つ。


釘なんかは見てるようで見てない。


回った。

なんて言っても全部結果論。


回らない。

なんてのも

『この道釘のせいだな。』

って結果論。



そうやって後付けで言い訳してきたのが僕の人生。

流れに任せて選択する事を避けてきた僕の人生は、我ながらありきたりだと思う。


だからパチンコ打つ時くらいは、今を忘れさせてほしい。

大連チャンで大爆発して、今を忘れさせてほしい。


この日打ったのは北斗の拳百裂。


結構ベタな機種を打つ事が多い僕。

なぜなら、ベタな機種の方が客がいっぱいいるから。

客のいない不人気台を打ってると不安になるのだ。

どうにも日頃のありきたりな思考が抜けない。



早速打ち始めると、千円で21回転。

3円換金ではありがちな回転率。


どうせなら、


『続行だっ!!』



『こんな台打ってられるか!!』


この位の事が思える判断材料が欲しい。

これでは続けるのかやめるのか迷ってしまう。

優柔不断なんだから簡便してくれよ…。


こんな時、僕は他に理由を探す。

他に見つけた2つの理由を追加



1.微妙な回転率。

2.打ちたい台。

3.隣が若い女性。

⇒続行。



全部後付け。

打ち続ける理由を探してるだけ。

打ちたいだけ。

本当はやめる気などさらさらない。



もうお気付きだろう。

僕はパチンコ依存症。


昔付き合ってた彼女と別れた理由もパチンコ。

それでもやめられない。


実は、休日だけってのも嘘。

営業の仕事をサボっては打つ。

仕事が終ればホールへ直行。


こんな事を思いながら、頭上の回転数は598回転を経過していた。


日常のストレスの上に、さらにストレスが溜まる。

ストレス発散しにパチンコ打ちにきて、さらにストレス溜めるとか世話がない。


さらに回す事、843回転。

ユダとレイの図柄バトル。

中央には赤い救世主図柄。


ボタン連打でロゴが揺れる。

つまり、潜伏確定。


しかし、いつも思うが百裂の潜伏は素直に喜べない。

嬉しさ半分、怖さ半分の微妙な感覚。


実際ホールで見ても、

6Rセグの点灯に驚きはすれど、喜びはしない人が多いのがそれを物語っている。


さて、そんな恐怖の潜伏確変はあっという間に18回転。

ラストチャンスとばかりにユダ登場。

PANアップ演出からアイテム有りでユダ先制。


『避けろ!』


願いを込めてボタンを押そうとした時、


手が止まった……









拳&トキ



脳汁ドバァーー!!


『この刺激!この刺激だよー!!たまんねぇー!!』


小さく拳を握り、その後に繰り出された無想転生が決まるのを待たずして、ハンドルを右に捻っていた。


2000個ゲット!!

出玉無しスルーの危機からの奇跡の生還に、2000個がさらに【重く重く】感じられた。



待望の乱世モード。

さっきはギリギリだったので、次は早い当りが、



…なんて都合の良い期待は裏切られ、あっさりスルーし単発。

途端に2000個が【軽く軽く】感じられた。



ここまで投資は35500円

これ以上の投資は、ヘルスからピンサロの変更を間逃れない。


しかし必死の抵抗むなしく、

157回転飲まれて追加投資。


おっパブも視野に入れた284回転。


またしても潜伏。


心臓に悪いSTの潜伏。

回転数が進むにつれ、徐々に心拍数も上がっていく。



最近思うのが、


これってセグ見ない方が幸せじゃない?


という事。


セグを見なければ、

スルーしても、
『小当たりだったのか…』
と思える。

当っても、
『どっちにしてもラッキー♪』
と思える。


ってこれもまた後付け。

たまには結果論も役に立つものだ。


…まあ、これでセグ見るのを我慢できてたらパチンコ依存症になってない気もするけど。



そんな事を考えていたら、

あっという間に32回転が終わり、仁王像モードへ。


わざとらしい煽り演出に嫌気がさした時、まさかの画面割れで潜伏ループ。


これは助かった…。

マジで終ったと思った…。





23回転潜伏

ま、まあ助かったか…。





10回転潜伏

助かった…のか??




さすがに…



そろそろ16Rが…








カウント0


こなかった…


4連続潜伏にてスルー。


最後は51回転に小当たりを追加し、150回転。


精魂尽き果てた…。




843回転−潜伏
29回転−16R
※32回転スルー(時短なし)

284回転−潜伏
33回転−潜伏
23回転−潜伏
10回転−潜伏
※32回転スルー

150回転やめ


収支:−5万円


残り1000円札1枚の財布を見て、意味のない自制心が働く。


『…ツタヤでDVD5本借りよ。』


意外にも、財布が空になるまで打つほど依存症ではなかった自分に、内心ホッとした。



喧騒のホールから出ると、途端に静かになった。

まるで別世界だ。

僕はまた、ありきたりな日常に戻ってきた。

財布の中身は変わらないけど…。



『金はないし、暑いし、嫌になるな…』



負けた苛立ちもあり、

夕立で湿気の多い暑さに息苦しさを覚える。



『アイスでも食べるか…』



近くのコンビニに立ち寄り、60円のガリガリくんを買って出る。


歩きながら半分ほど食べると、あっという間に溶け出すガリガリくん。

ポタポタと汁がたれ始めた。


あわてて、少し硬い下角部分を吸って応急処置。

その隙に上からガブリ。

また応急処置。


そしてもう一度上から食べようとした時、

それは目に入った。








ガリガリくん当り



ありきたりな日常の中に見つけた、小さな幸せ。


手があり足があり、今日がある。

給料が出ればパチンコも打てる。


そんな小さな幸せを大事にしよう、そう思いながら家路につく。


また明日から頑張れるような気がした。


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