この日記の2ページ目です。
「(はー・・・マジあいつらといると疲れる)」
アキバの地下アイドル歴5年。
手あたり次第に受けた所属オーディションで、唯一受かったのが今のプロダクションだ。
キョウコとナルミは、そこで知り合って、
マネージャーに3人組グループとして組まされた。
イメージ的にキョウコはしっかり者、
ナルミは柔らかほんわか、
私はその真ん中の、いつでも明るい元気キャラってわけ。
「(あくまでキャラであって、別にそんな、いつでも元気でもないし)」
ツインテールを解いて、
(っていうかカツラなんだけどね)
3枚に重ねたつけまつげとメイク落として。
マスクとメガネだけで変装完了。
地味顔だから、誰にも気づかれたことがない。
裏口を出ると、さっきまで会場にいたファンとすれ違う。
『今日こそミルキーに逢うんだ!』
なんて叫んでるのを背中で聞きながら、信号を渡る。
華やかなネオンの駅側とは反対の方へ。
さっき財布の中を見たら、全然お金がなかったから今夜は歩いて帰ろう。
「(アイドルって、もっと儲かるモンだと思ってたんだけどな)」
実家のある岩手から上京してきた時には、予想もしていなかった現実。
・・・でも、いいのだ。
ああ、こうして部屋の前に立つだけでも匂いが漂ってくる。
ポケットから取り出した鍵を開けて、室内に入る。
音に気づいて、キッチンからぴょこりと彼が顔を出してきた。
「おかえり。ちょうどスパゲッティが茹で上がったところだよ」
頬を緩ませて、ゆっくりと笑う。
「ただいまーっ!シンジくんっ!!」
「歌はいいね。歌は心を潤してくれる。
リリンの生み出した文化の極みだよ」
「カ、カヲルくんっ!?
今日はカヲル降臨でござるな!!」
ううーっ、たまらんたまらん!
辛抱たまらんっ!!
この石田彰ボイス・・・
ハ レ ル ヤ!!!!
そう、同棲中のシンジくんは、
料理の腕と石田彰ボイスを兼ね備えた年下彼氏なのだ!
出来上がったばかりのカルボナーラを食べ、
今日の出来事を渚カヲルボイスをで聞きつつ・・・癒される。
上京してきて悪いことばかりじゃないって思えるのは、いつだってシンジくんのおかげだ。
私が極度の声フェチだと知って、
石田彰が演じてきたキャラを日替わりで披露してくれるのだ!
そんなヲタクの要求にも応えてくれるシンジくんが・・・シンジ、く、っん、がッ・・・!!
はあああ、もうだめええぇんッ!
イ・・・イッちゃううう!!
Σ(‘A`) ハッ
・・・と、取り乱したけれど、
別に、変態な訳じゃないからね!?