もう何年も音沙汰がなく、すっかり忘れていたのだが、
俺には友人がいた。
彼と出会ったのは、何年か前の年末年始。
俺が知り合いの誘いで、皿洗いのアルバイトをしていた時のことだ。
彼は地元の人間でなく、
住み込みのバイトをしながら転々としている若者だった。
この手の若者は、
まとまった金と、まとまった休みが手に入るためか、
パチンコ・パチスロ好きが結構多いように思う。
彼もその典型だった。
パチンコ・パチスロを趣味にする人間ってのは、本当に不思議なもので、
お互いがそうだと知ると、一気に距離が縮まる。
年齢や仕事上の立場など関係なく、ある種の仲間意識のようなものが芽生えてしまうものらしい。
ところで、住み込みのバイトなんて言うと、
将来の目標に向けて、お金を貯めて頑張っているような印象があるのかもしれないが、
世の中はそういう前向きな人ばかりでない。
地元に帰れないような理由がある者や、
転々とする生活が性にあっていた者、
はたまた男女の出会いを求めている者、
あるいはただなんとなく続けている者も多かったりする。
彼の場合は、地元で問題を起こし、
それ以来は帰る気が全くないというタイプだった。
とは言っても、彼の背景に関しては、俺は詳しく聞く気もなかったし、
結局は知らない事の方が多いままだった。
彼は少しの事でカッとなりやすい性格だったのだが、
悪意をもって悪事を働くという事はなく、
職場で会って、パチンコ・パチスロの話をする分には、
明るくて気のいいヤツという印象だった。
ただ、やや気難しい性格のせいか、
そこまで親しい友人はいなかったように思う。