【リュウキチのパチ日記】
人生の一番底辺 Vol.2
〜前回日記の続き〜
入場門をくぐると、逆に帰ろうとしていた知らないオッサンが、すれ違いざまに話かけてきた。
「兄ちゃん、今からか?ワシもう帰るから新聞やるわ。今日、よう荒れとんでぇ」
と苦い顔をしながら競馬新聞をくれました。
ラッキーと思いながら軽く礼を言って受け取り、少しシワの目立つ新聞をひろげながらパドックへと歩き出しました。
子供の頃から競馬好きの父によく連れてこられたこともあり、私は若い頃から中央競馬より地方競馬が好きでした。
今のように生活に直結するほどガッツリやってはいませんでしたが、
それでもそこいらの連中よりかは地方競馬の事をドップリと知っているつもりでした。
そして自信もありました。
今思えば、その時の私なんて競馬の事をまだ1ミリも理解していない青二才だったなぁ…と痛感してます。
当時知っていた全知識なんて、競馬のケの字にもならないほどの微知識でしたから。
なのに馬券の組み立てに『自信』まであった自分が、今になって本当に恥ずかしいです。
そんなどうしようもなく青臭かった当時の私。
まさか自分がこのレースを皮切りに『馬券生活』へと突入していくなど露知らず、
もらった競馬新聞をバサつかせながらパドックへ。
ちょうどメインレースのパドック中で、今から本馬場入場って時でした。
1番人気は、当時の地方競馬で圧倒的な強さを誇っていた某怪物馬。
単勝で1.1倍。
その怪物馬を頭にすえた他の券種も、あまりに安すぎて妙味がありません。
うーーん…
この馬には逆らえんからなぁ…
このレースは見送りにしようかなぁ…
と弱気になっていたその時、とんでもない光景が目に飛び込んで来ました。
その怪物馬が返し馬(本馬場での準備運動)で、なんと騎手がムチを入れたんです。
返し馬でムチを入れる時は『トモが下がっている時』とか『気合いが入って無い時』とか色々理由はありますが、何にしても良い状態ではない時にムチを入れることが多いです。
向こう正面で、ほんの二回ほどだったのですが、確かに入れてました。
今でもその光景が脳に焼き付いてるぐらい衝撃的な瞬間。
つい今さっき起こったそのスクープ的な瞬間をバッチリと目撃できた人は、この場内でどれほど居たんだろう…
恐る恐る周りを見回すと…
気づいている人は見当たらず、場内は怪物馬の圧勝劇を確信したかのような、ちょっと諦めまじりの緩い空気で満ちてました。
この『緩い空気』と『返し馬でムチを入れられた怪物馬』が、自分の頭の中でうまく混ざり合わないという「異様な違和感」が私を襲います。
こりゃもしかして…と胸騒ぎ。
この馬の能力なら…
このメンバーなら…
たとえ調子が悪くても…
2着には来る可能性が高い…
ならば…
怪物馬を2着に固定した馬単総流しか!?
※馬単とは…1着と2着の馬を順番通りに当てる馬券
はやる気持ちを抑えきれず、馬単オッズが流れてるテレビ画面まで猛ダッシュ。
当然のごとく、怪物馬が2着なら軒並み高配当がズラリ!
『この怪物馬だけは絶対に負けない』と皆が思っている、そんな極端に偏ったオッズ。
早くなる鼓動。
沸き立つ鳥肌。
これだ!と決断しました。
問題はいくら賭けるか。
10頭立ての馬単総流しなので9点買い。
もし1点100円づつ賭けたら計900円。
手持ちは5万。
いつもなら、普通に働いて生活していたあの頃なら、流し買い時は1点につき数百円までが私のリミットでした。
しかしこの日の私は焦燥の塊。
大声で泣きたくなるほどの焦燥感が、思考をオーバーヒートさせてました。
どうせ…
こんな車中泊の生活なんて長くは続かんだろう…
だったらここは勝負じゃないか?
そうだ、勝負だ!
今まで色んなことで散々負けてきた。
人生も何もかも、嫌になるぐらい負け続けてきた。
だからもう…
ちょっとぐらい、勝ってもいいじゃないか!?
いつも無難な選択ばかりして、
蔑まれても、恥ずかしそうにヘラヘラ笑ってやり過ごす。
そんな虫けらのような自分から、もうそろそろ抜け出せよ俺!!
明日か何十年後か判らないが、いつかは死ぬ。
その死の瞬間、遠のく意識の中で思い出すのは、いつも何事からも逃げてばかりだった情けない自分の顔。
そんな生き方に意味があるのか?
自分を殺してまで、生きる価値はあるんだろうか?
もう充分、負けてきた。
『負けの冬』の中で過ごしてきた。
だからもう、これからは勝ちを積み上げよう。
『勝ちの春』を迎えよう。
冬来たならば春遠からじだ!
これは『勝て!』と誰かが言ってるんだ!
チャンスなんだ!!
…とまあ、あの日の私は完全に壊れてました。
激しく自問自答を繰り返すだけの典型的な『破滅型人間』の思考です。
こうなるともう、リミッターは簡単に解除されます。
馬単、1点につき5000円づつで総流しを買う。
計45000円也。
少しづつ賭けてジリ貧で消えていくぐらいなら、いっそ思い切って攻めたれ!
もし負けても、前倒れで負けたれ!!
と、半泣きになりながら全財産の殆んどを突っ込みました。
こちらの気持ちとは裏腹に、券売機から無機質に吐き出される馬券。
それをポケットの中へ大事に大事にしまいながら、祈るような思いでスタートのファンファーレを聞きました。
順調にゲートへ吸い込まれていく競争馬たち。
最後の1頭が収まり、体制完了。
私にとって『今後の生き方』を決定づけた運命のゲートが、
今、開きました。
続きはまた来週。
次のページからは競馬好きにはたまらないアノ機種の実践です。
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