「ケェーン・・・」
リンの叫びではない。
皆様は鹿の鳴き声を聞いたことがあるだろうか?
「ケェーン・・・」
こんな鳴き声だ。
僕の職場は山奥にあるため、
夕方になると遠くの方から聞こえてくる。
ここで、この鹿の鳴き声にまつわるエピソードをひとつ。
数年前、僕達は山奥でキャンプをしていた。
キャンプと言っても、テントを張るようながっつりアウトドアではなく、
山奥の湖畔にいくつかのバンガローが佇んでいるキャンプ場だ。
ちなみに、これは私有地であり、
先輩が土地を買い、僕達が労働力となって作り上げた、
いわゆる大人の秘密基地的な場所だ。
そんな大人の秘密基地に、1ヶ月に1度ほど集まり、
釣りをしたり、ウェイクボードしたり、
非日常的な休暇を楽しんでいた。
夜は夜で、大宴会。
山奥なので近隣からの苦情もなく、僕らの騒ぎ声が山に響いていた。
そんな騒ぎ声に交じり、たまに
「ケェーン・・・」
と聞こえてくるのは、鹿の鳴き声。
夜も更け、一人、また一人と、
バンガローで眠りにつく。
そんな中、僕とツレはいつまでもいつまでも酒を飲み、下らない話で盛り上がっていた。
と、その時・・・
「ケェーン・・・」
また、鹿の鳴き声が聞こえる。
「ケェーン・・・」
しかし、何かが違う。
通常、鹿の鳴き声は遠くの山から聞こえてくるのだが、
何か近い気がする。