そして、
文字では表せなく、何となくわかってほしいのだが、
ドアがゆっくり開いた時の、あの微かな音の違いと空気の流れの違いを感じた。
無音だがそれと分かる感覚。
怖くなって和室の押入れに静かに隠れる。
引き戸は音がするので開けたまま。
息を殺してじっと固まる。
しかし、誰かが入ってきた感じが一切しない。
テレビからニュースが流れているだけ。
しかし、泥棒だって気づかれないように入ってくるはずだ。
警戒しながらも勇気を出し、反対側の引き戸を少し開けて様子を見てみる……
何もいない。
プルルルル!プルルルル!!
電話が鳴り出しビクッとなる。
お母さんかも知れない!
しかし、電話に出たいが、
今もし出て泥棒がいたら殺されるかも知れない。
そんなことを考えていると電話が鳴り止んだ。
それにしても誰もいないような気しかしない。
泥棒ならこっちにタンスがあるし、
通帳やらを探すために和室に来るだろう。
だが、一向にこない。
意を決してゆっくりと押入れから出てみることにした。
リビングを見ても誰もいない。
磨りガラスのドアは…
閉まっている。
ん?閉まっている??
開いた音がしたのに…?
勘違いか?
リビングから電話の子機を取り母に電話すると、
母は親戚の家から今帰ってるので少し遅くなるとの事だった。
安心して電話を切り、テレビを見ようとした、その時だった。
「……クスクス」