天下一 続編(田中耕一)
~前回までのあらすじ~
俺の名前は『田中耕一』
持ち前のグーたらさで
仕事では失敗続き
見下され怒られる毎日に
嫌気がさした俺は、
仕事場に辞表を叩きつけ
晴れて自由の身に!
…
喜んだのも束の間、
あっという間に無くなって行く
俺の財産。
自らが得意と思い込んだパチンコで
散財する毎日
そんな日々をおくっていた俺に、
変な爺さんが話しかけて来た。
肇
『わし、
その台打っていい?』
出会いの印象は最悪だ
自身でハマり散らかした台を
ハイエナする爺い
嫌味満載で近づき話かけた俺は、
何故か爺さんに褒められた。
『この店で
回る台をよく見つけれたな』
訳がわからない俺だったが、
この出来事で
爺さんとなぜか意気投合する事態に
『パチプロとは何たるか?』
自称勝ち組の俺が、
真の勝ち組になる為に
この変な爺さんが
【パチプロ】だと気づいた俺は、
勝てる秘密を探るべくさらに近づく
そして気づけば!?
爺さんと俺で
『でこぼこパチプロコンビ』誕生さ。
…
耕一
『爺さん、今日は飯奢るよ』
…
※まだ前作をお読みで無い方は
こちらからどうぞ!
~あらすじ終わり~
…
…
耕一
『何でも好きな物食べてくれ』
爺さんと二人で大勝利!
なぜか俺は爺さんとノリ打ちした事で
自分もパチプロになれた気でいた。
酒に酔ってきた爺さんは、
あいも変わらず昔の武勇伝を語り出す
耕一
『これだから年は取りたくねぇな』
肇
『言うじゃねぇか若造が』
二人で笑いながら酒を酌み交わす
こんな楽しい時間は
久しぶりじゃないかな。
仕事に明け暮れていた時は、
酒を呑んでも付き合い酒で、
仕事仲間に連れて行かれた席で、
からかわれ笑われていた。
やれ
『一発芸をしろ』だの
『一気飲みしろ』だの
挙句に同僚の女の子の前で、
『こいつが遅刻したせいで
仕事が忙しくてさ』
なんて過去の話を
ぐちぐちと掘り返してくる。
『2日にいっぺんは
遅刻するんだぜー』
まじで怠い連中だ。
蔑んだ目で俺を見るんじゃねぇ
遅刻だってせいぜい週に3回くらい
するだけだろが
大声出していい返したいが、
俺にそんな度胸は無い。
そして最後はお決まりの‥
『お前のせいで
皆んな迷惑してんだから、
ここの支払いは田中の奢りなぁ』
散々馬鹿にされて支払いは俺持ちだ。
…
耕一
『ぁぁ、
なんかやな事思い出しちまったな』
肇
『なんだうかない顔をして?』
楽しい酒の席に
嫌な記憶で水を差したくない。
耕一
『なんでもねぇよ爺さん、
それより明日も宜しくな
二人で勝ちまくろうぜ』
肇
『、、、、』
俺たちはパチプロコンビ、
二人で打てば負けは無い
これからの人生は
勝ち組として生きていく!
俺はその思いを爺さんに託した。
…
肇
『なら明日は朝7時に◯店に集合だ』
…
おいおい爺さん‥
耕一
『そんな朝
早くなくてもいいんじゃね?』
…
どうせ勝てる台に座れるんだから、
そんなに頑張らなくてもいいだろう。
思わず本音が口からこぼれ落ちた。
…
肇
『ばかたれ、
いい台があるなら尚更きっちりと
台を抑えなければ
意味ないじゃろが』
少し爺さんの顔が曇り出した。
だが、
これからパチプロコンビとして
やって行く仲だ
ここはハッキリと
自分の考えも言わないとな
…
耕一
『仕事じゃねぇんだからさ、
もっと
気楽に行けばいいんじゃね?』
肇
『、、、、』
…
爺さんの曇った顔が
少し怒り顔になっている。
…
耕一
『だいたい俺さ、
朝は苦手なんだよね』
俺は持ち前の持論で朝から並ぶのを
否定、
それより人がハマりちぎった後の台がいいと伝えた。
…
肇
『ハマるとか当たり易いとか、
何を言っているんじゃ?』
…
爺さんは、
パチンコは回転率や
ボーダー理論が全てだ
と俺に反論してきた。
…
少し飲み過ぎたかもしれない
爺さんの反論がまるで俺を
馬鹿にしてるみたいに聞こえて来た。
…
耕一
『爺さんだって
俺の慶次をハイエナして、
たくさん出していたじゃねぇか』
俺の話に呆れ顔な爺さん。
少し険悪なムードになってきたが‥
…
肇
『明日も早いしそろそろ帰るか』
爺さんは帰宅を宣言した
俺も呑み過ぎて
頭が痛くなってきたから
その意見には賛成。
…
耕一
『約束通り、ここは俺が払うよ』
爺さんは少しニコっと顔を緩めた。
なんだよ、結局金なんかよ‥
俺は心でそう思ってしまったが、
相手は年配の爺さんだ、
勝たせて貰うって意味でも
ここは恩を売っておかなきゃな。
…
肇
『有難う』
…
なんだ、爺さんだって
可愛いとこあんじゃねぇか
昔の会社連中みたく
『お前が払うのは当然だ』
みたいな態度を
とられるかと思ったぜ
…
肇
『明日は朝集合だから忘れずにな、
遅刻するんじゃねぇぞ』
…
別れ際に爺さんはそう言った。
何気ないない会話だし、
明日の約束なんだから
普通で何らおかしくもない
だが、
…
耕一
『遅刻、遅刻ってうるせぇな、
俺が遅れたら一人で打っとけよ』
…
酒のせいかもしれない
なぜか『遅刻』と言うワードに
酷く腹を立ててしまった。
…
肇
『一緒に打つんじゃなかったのか?』
…
爺さんは冷静にいい放った。
俺はなぜかイライラが止まらなかった
それがなぜかは
何となくは分かっていたが、
…
耕一
『はいはい、了解でーす』
…
不貞腐れながら爺さんに返事して
俺は帰宅した。
イライラが止まらない原因
本当は分かっている
…
『本当は俺が
全ての元凶だったからだ』
…
遅刻して怒られる、
周りに迷惑をかける、
会社に損害を与える、
本当は分かっていたんだ。
周りに馬鹿にされる‥
それは当然の結果だったんだ。
会社の連中だって、
最初から俺を見下していた訳じゃない
むしろ、
励ましてくれたり、
仕事を手伝ってくれたり、
いつも仲間の輪に入れようとしてくれてたんだ。
俺はそれに甘えていただけ
いくら遅刻しても
皆んなは許してくれる
仕事のミスは皆んなが助けてくれる
俺じゃなくても誰かがやってくれる
そんな生き方をずっとして来たんだ。
分かっている
分かっちゃいるけど‥
…
耕一
『、、、、』
…
そんな事を考えていたが、
次第に猛烈な眠気と共に
意識は眠りへと落ちていった。
…
…
翌日の朝
ちゅん‥ちゅ、ちゅん
…
耕一
『うぅぅん、もう朝なんか』
…
今日の天気は晴れ模様だ
眩しい陽射しが目に入り目が覚めた。
酔っ払って寝たせいか、
起きたはいいが頭が痛い。
身体が怠いので
二度寝しようかと考えたが、
携帯電話がチカチカと光っている。
…
耕一
『ああぁ、爺さんか』
その光は
携帯に着信があった証拠だった
携帯画面には5件の着信とある。
そう言えば‥
耕一
『今日の朝7時に
◯店とか言ってたなぁ』
時計の針は既に11時を回っている。