リュウキチ日記第九話☆
【リュウキチのパチ日記】
人生の一番底辺 Vol.8



前回日記の続き〜



黒さんをマークする日々が続くにつれ、色々と彼のことがわかってきました。


例えば、嫌いな騎手の馬券は絶対に買わないとか。


複勝か単勝意外の券種は絶対に買わないとか。


雨の日(馬場が悪い時)は絶対に来ないとか。


乗ってる車は有名高級車(やっぱり車体は黒色)だとか。



なんの仕事をしてるかは判らなかったんですが、その身なりや言動からは明らかに成金の匂いがしてました。





なかでも私が一番嬉しかった黒さんの癖は、やはり『締切ギリギリで馬券を買う』でした。


理由は先週書いた通り。


かなり有利な立場でした私。


あとは馬券で強弱つけたカウンターをカマシ続けるだけで、徐々にですが着実に財布は潤っていきました。




やり方が汚いと思われるかもしれません。


ええ、私も当時から思ってました。


汚いやり方で儲けてると。


でも…この頃の私は、どんなことをしてでも生きてやろうと思ってたので、罪悪感は全くありませんでした。


だから黒さんに対するカウンターは絶対にやめず、徹底的に続けていました。


金が有ればそれでいい、とさえ思ってました。






そんなある日。


いつものように朝から競馬場へ。


この日は朝からあいにくの雨。


4レースぐらいまで馬券を買わずに黒さんを待ちましたが、不良馬場を嫌う黒さんはやっぱり来ませんでした。


『今日は早々に競馬を切り上げてパチンコでも打つか…』


そう思い、新聞を畳んでたら、いきなり"見覚えのある顔"に声をかけられたのです。


声の主、それはいつも黒さんと一緒にいるツレの男性でした。


丸いメガネをかけてて華奢(きゃしゃ)な体型。


黒さんとは真逆で、いかにも貧弱そうな男性です。


歳は30代後半ぐらいでしょうか。



にこやかな顔で近寄ってきて、


「あんた、単・複でよう儲けとるやろ?」


といきなり言われ、体が浮き上がりそうになるぐらいドキっとしました。


うわっ…気付かれてた…、と。



『やべ…なんかイチャモンつけられるんちゃうか…』



と一瞬焦りました。


でもすぐに平静を取り戻し、開き直りました。


だって…


所詮ギャンブルは客同士の金の奪い合いじゃないか!と。


だから儲かる情報を垂れ流しとる黒さんの方が悪いんや!と完全に開き直りました。


私はその男性を一瞥だけすると、あからさまに不快な顔で無視したのです。


でも男性は勝手に話を続けます。



「ちゃうちゃう。あんたを責めたりしとるわけちゃうんや」



目の前で手を大げさに振りながらそう言うと、ドカッと私の隣に座ってきました。



『おいおい、なにを当たり前のように隣に座っとんねん…』



と煙たい顔を私はしましたが、彼はお構い無しに話を続けます。



「よう考えてみ。あんたと同じく単・複でエエ思いのできる立場の人間がもう1人おるやろ?」



もう1人……?


すこし考えてからハッとしました。





そう、この男性です。


この男性も私と同じく、馬券で有利な立場です。


思わず、


「あ、じゃあ…あなたも逆目を買」


と私が言い終わらない内に彼は、


「違うっ。僕は馬券を一切買わんのよ」


と食い気味に、ちょっと強めの口調で否定してきました。




そこから彼は切々と私に、


『黒さんとの関係』

『馬券を買わない理由』

『なぜ私に声をかけたか』


などを話し出しました。



(話の内容を詳しく書いても構わないんですが、


万が一本人が読んだり、彼と同じような立場の人が読むと気分を害すると思うので、詳細は省きます。


申し訳ございません)





すべてを話終えると彼は、


「ま、そういうこった」


と言いながら、両膝をパンっと叩いて立ち上がりました。


そして、


「あと、僕らが会話をしたのは…コレな」


人差し指を唇にあてるしぐさをしながら、口角をキュッと上げた笑顔でそう言うと、彼は私から離れていきました。


私は何も返答することが出来ず、離れていく彼の背中をただただ見てました。



かすかに影を落とした、その細っこい背中を…







なんていうか…


彼の話を聞いて、オーバーヒート気味だった私の思考は急速に冷えていきました。


まるでバケツ一杯の氷水を、いきなり頭からかけられたかのように…。




でも不思議と嫌な気分ではなく、


ずーっと水中で過ごしてて、久しぶりに水面へ顔を出して呼吸をしたような気分でした。


普通に笑うことすら忘れて乾ききってた僕の心。


そこに彼が一滴(ひとしずく)の水を与えてくれたような感じでした。



何事も、


『奪うだけだと、いつか自分がパンクする』


ということを私は彼から、そして黒さんから学んだのです。






そして、この日を境に、


私は黒さんマークを一切やめるのでした。




〜来週へ続く〜







はい、ここからはいつもの如く稼働日記でございます。


今回はちょっとツイてない日の日記。


そして最後は・・・



ではどうぞ。






朝、販売機でホットコーヒーのボタンを押したら、


『ニッキ水』


というとんでもない変化球の飲み物が出てきました。


グビリと一口…。


完全にコーヒーの口になってたこともあり、


口中内ではニッキ水に対して暴動が起きかねないほどのマズさでした…


これはある意味…ツイてる…のかな?…


そんな微妙なスタートを切った日でした。




こんな日は何をやっても裏目が出やすくなるもの。


そう懸念しながらも、今日は近くのボートピア(場外船券売場)にてボートレース勝負へ。


まあ…そんなにニッキ水を気にすることは無いだろう…


むしろいい厄払いが出来たと喜ぶべきだと、勇んでレース予想を開始しました。





しかしニッキ水の呪い、恐るべし。


なんと朝から見事すぎるほどの完璧な裏目祭りに…。



3連単で1→2→3を買えば2→1→3で決まり、


ならばと2連単で3→5を買えば5→3で決まってしまう…。


ならば次のレースは2連単で4→1が固いと思ってたので、


敢えて裏目の1→4を厚目に買ってみる。


すると・・・






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